2022年3月18日
生物科学コース・徳田誠准教授(システム生態学分野)のグループは,親世代で昆虫から加害を受けたツルマメの次世代が、種子を早く形成し、種子数や種子サイズを変化させる現象を発見しました。
本成果は、米科学雑誌PLOS ONEに「Transgenerational changes in pod maturation phenology and seed traits of Glycine soja infested by the bean bug Riptortus pedestris」として掲載されました。
(https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0263904)
本研究の概要は以下の通りです。
ホソヘリカメムシ(以下ホソヘリ)などのカメムシ類はダイズを加害して収量や品質の低下を生じます。
本研究では、ダイズの原種であるツルマメを用いて、ホソヘリに対する防御応答を調査しました。その結果、親世代でホソヘリに加害されたツルマメの次世代では、ホソヘリに加害されなかったツルマメに比べて莢の成熟が早くなり、種子数は減ったものの、より大きなサイズの種子を付けました。
秋のホソヘリの発生時期より早く種子を作り終えてしまうことにより、ホソヘリによる食害から逃れる効果が期待されます。また、一般に種子サイズが大きいほど種子食性の昆虫に対して耐性があることが知られており、大きな種子を付けることもホソヘリの食害を軽減する効果が期待されます。したがって、次世代で見られた莢の成熟時期や種子サイズの変化は、植物側のホソヘリに対する防御応答の可能性があります。
昆虫に加害された植物の次世代で、昆虫に対する防御物質を多く産生するなど、世代を超えた被食防御応答に関しては過去にも報告例がありますが、今回のような、昆虫の加害を受けた植物の次世代における種子形成時期の変化は極めて稀な現象です。
連絡先: 徳田 誠 tokudam(at)cc.saga-u.ac.jp
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